SSブログ

駒の話シリーズ 40:騎馬民族 

 本シリーズも ついに 40話 思い起こせば 2009年4月5日 第1話から脈々と続いているのです。本稿の執筆者 ”駒名主” さんの もえたぎる誇りと情熱にただただ感嘆するばかりであります。

駒名主さんへのコメント  komagaku@kih.biglobe.ne.jp

 

 騎馬民族とは大変ロマンを感じる言葉であるが、日本史学者の武光誠氏は「騎馬民族とい
img046-1.jpg

う概念は、歴史家の立場から見れば、きわめてあやふやなものである」と述べている。

img046-2.jpg

一方、内陸アジア史学者の林俊雄氏は遊牧騎馬民族の特徴として四つを上げている。

     農耕を行わない

     家畜と共に移動し、定住する町や集落を持たない

     弓矢を武器とし、全員が騎馬戦士である

img047.jpg

     その戦術は機動性に富み、かつ現実的であって、不利な時はあっさり退却する

『広辞苑』での騎馬民族の説明は「中央アジアなどに住み、馬の機動性を利用して遊牧と軍事力を発展させ対外進出を行った民族」と書き、具体的な民族として「西方のスキタイ・フン、中央の烏孫、東方の匈奴・烏桓・鮮卑・突蕨・ウイグル・モンゴル」をあげ「扶余・高句麗・渤海・女真」などを加えることもあるとしている。

 騎馬民族のフレーズで想起するのは、江上波夫氏の「騎馬民族征服王朝説」である。江上氏はこの仮説を、終戦直後の昭和231948)年、「日本民族―文化の源流と国家の形成」をテーマにした討論会で発表した。江上氏は「日本の大和政権は大陸から渡来した東北アジア系の騎馬民族が樹立した征服王朝である」と唱え、当時の学会に大きな衝撃を与えた。しかしその後、考古学、歴史学、民俗学、神話学などの各方面から批判が出されて、江上氏の説は根底的に否定されている。 江上氏の仮説とは「満州の松花江流域の平原にいた扶余系騎馬民族を起源とする、朝鮮半島南部を支配していた騎馬民族は、4世紀初めに九州北部を征服、5世紀初めに大阪平野に進出して大和朝廷を樹立した」である。

江上氏の仮説に対しての、歴史学者などの辛口のコメント(反対意見)を幾つか紹介する。

「昭和の伝説」(佐原真氏)

「学問の進歩や苦悩・反省と無縁の騎馬民族説は疑問とせざるをえない」(鈴木靖民氏)、

「戦前の喜田貞吉の日鮮民族同源論を基礎にしたもの」(岡田三真氏)、

「ひょうたんなまずの構造を持つ説」(安本美典氏)、

「江上波夫氏が創作した新しい神話」(岡田英弘氏)。

江波氏の騎馬民族説の功績と言えるのを上げれば、この説により日本の馬文化と馬具の研究が広く、深く推し進めることになったことにある。

なお、考古学での日本列島の最も古い馬の確認は、甲府市塩部遺跡の4世紀第3四半期の馬の歯27点などである。馬の日本列島への渡来について、国立民俗博物館の西本豊弘教授は「山梨県という場所から考えると近畿地方や九州ではもっと古くから飼育されていたと推測されるので、いずれもっと古いウマが出土するであろう」と述べている。

西本氏の説を裏付けるような馬具が箸墓古墳(奈良県桜井市)の周壕から出土している。箸墓古墳の築造は3世紀半ばとされるが、築造後30年ほど堅く積もった堆積土の中から木製の輪鐙が布留1式土器と合わせて発掘された。布留1式土器は3世紀末から4世紀初頭とされるので、この輪鐙は塩部遺跡の馬の骨より50年以上も古い。

その後の馬具はいずれも福岡県であるが、4世紀末から5世紀初頭の老司古墳3号石室(福岡市)の鞍金具片、轡、捩り金具、池の上古墳群6号墳(朝倉市)の鉸具、鞍金具、銜出、西の浦古墳(宮若市)の捩り金具、汐井掛遺跡(宮若市)200土壙墓の鞍金具の(しおで)、久原一区1号墳(宗像市)の輪鐙が古い。畿内では行者塚古墳(兵庫県加古川市)の円形と長方形の鏡板付轡、七観古墳(大阪府堺市)の轡、鐙金具、鞖、鞍金具、3環鈴、安養寺古墳群・新開1号墳(滋賀県栗東市)の輪鐙などが古い。

良く知られている騎馬民族の元祖は、黒海の北岸を本拠地とするスキタイ(前7~前3世紀)である。前5世紀のギリシャの歴史家のヘロドトスはその著『歴史』にスキタイについて「かれらには、築かれた町も
img048.jpg

城壁もない。すべて騎射の兵である。行く先々を家とし、定住する家屋をもたず、耕作を行わないで家畜によって生活する。かれらの唯一の財産は馬車である」と記している。スキタイは騎馬民族の中でも、遊牧騎馬民族の代表と言える。ただすべての騎馬民族が遊牧を行っているとは限らない、高句麗のように騎馬戦闘集団ではあるが農耕や狩猟を生活の基盤としていた例もある。

img049-1.JPG

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。